梅の季節に3種の梅酵母でパン焼き比べ。「青梅酵母」「追熟梅酵母」「梅シロップ酵母」
梅しごとの季節になると、どうしても気になってしまう「梅酵母」。
その年ごとに、青梅や追熟梅、さらに梅シロップなどを起こしてきました。
本記事では、これまでに仕込んだ3種類の梅酵母——
「青梅酵母」「追熟梅酵母」「梅シロップ酵母」それぞれの酵母の記録と、当時の記録をもとに再構成し、考察を交えてまとめました。
写真とともに酵母の風味や発酵力のちがいを振り返っていますので、梅酵母に興味のある方は参考になさってみてくださいね。
※この内容は、当時の記録をもとに再構成し、考察を交えたまとめ記事です。
※元になった過去の酵母づくりの記事は文末にリンク表記しています。
青梅酵母と追熟梅酵母の仕込み
まずは、採れたてすぐの「青梅」と、5日ほど追熟した「追熟梅」の比較から。
”追熟梅"という言葉はないですが完熟梅ではないのでそう呼ぶことにします。
瓶の中でぷくぷくと泡立ち、元気な酵母液になっていく様子は、梅の状態による違いも見えて興味深いです。
酵母液できあがり。
追熟梅のほうは一部皮が破れてふわふわ浮いてきています。
つづいて元種づくり。
追熟梅(左)のほうが発酵スピードが速く、種落ちしている状態。
予想どおり、追熟梅のほうが発酵の進みが速いです。
カンパーニュで焼き比べ(青梅酵母 vs 追熟梅酵母)
できあがった元種でカンパーニュを焼いた記録です。
どちらの酵母も、配合は同じ。工程も基本同じです。
追熟梅酵母のほうが発酵が早いので、青梅酵母が後から追いかけるかたちで焼成まですすみました。
左が追熟梅・右が青梅の焼き上がりです。
断面の色、追熟梅は赤みがあり、青梅は青みがかっているように見えます。
焼き上がりはそれぞれの酵母の個性がしっかりと現れました。
特に青梅のほうは、酸味が残っているのを感じました。若草の青っぽいにおいもしています。対して追熟梅のほうは、気泡の入り方も豊かで、上へ釜伸び力が強かったです。
どちらも梅らしい、すっきりとした香りと味わいです。
同じレシピでも酵母の違いが影響すると分り、あらためて酵母の面白さを実感しました。
つづいて、梅シロップも加わって、梅酵母が3種類になります。
梅シロップ酵母の仕込み
まずは梅シロップを仕込みます。
梅のエキスが砂糖に染み出て美味しくなっていく工程は見ていても飽きません。
このあと、置いておくと発酵してくるので、その梅を使います。
(シロップとして頂くときは発酵止めに火を通してできあがりです)
このときは、1/3量をラカントホワイトにしたせいなのか、発酵がとても弱くて。
浮いている梅の数個から、ぷくぷくと優し~い泡が見えてきたタイミングで、その梅を10個ほど引き上げて酵母づくりをしました。
まだ弱い発泡でしたが、できたことにして元種の工程に移ることにします。
元種づくり(青梅酵母・追熟梅酵母・梅シロップ酵母)
折角3種揃ったので記念写真。
先を急いだせいか、梅シロップ酵母はおとなしめ。
実を出して、酵母エキス自体の色比較。
元種づくりに移ります。
第一段階の発酵の様子は、追熟酵母が早かったですね。
これをさらに2回ほど継いで元種ができあがります。
そしていよいよパン焼きの工程へ・・・
食パンで三種の酵母を焼きくらべ
最後に、3種の「梅酵母」で焼き比べです。
今度は食パンを選びました。
結果はこちら。
手前から、(1)青梅酵母/(2)追熟梅酵母/(3)梅シロップ酵母
うーん、期待したほどの違いは出ませんでしたね。
どれも同じです。
というのも、(2)追熟梅酵母の発酵が早くすすんだため、先に成形・焼成に入ったこともあり、タイミングが異なっていました。そのせいなのかパンは他の2つよりも小さめです。
今この記事は、4年前の過去ブログを紐解きながら、レシピノートや、写真フォルダを確認して書いています。
ここにのせていない工程写真もありますが、とにかく、追熟梅酵母の発酵がとても速かったことだけはどの工程を見てもよくわかります。
味も、落ち着いた味わいで軍配は追熟酵母に上がりました。
梅シロップ酵母については、この年は酵母を起こす時点から元気がいまひとつだったので、酵母の強さ比較としては不十分だったかなといった感想です。
その前年に作ったときの梅シロップ発酵の様子はこちらです↓
まとめと感想
3種類の梅酵母を比較して焼いたパンたちは、それぞれに異なる経過と焼き上がりを見せてくれました。
特徴をまとめると、
・青梅は爽やかさ
・追熟梅は香りの強さと発酵力
・梅シロップ酵母はやさしい味わい
……そんな個性を感じられる酵母だったかなと思います。
中でも追熟梅酵母は、発酵力の強さと香りの豊かさで一歩リードしていた印象です。青梅酵母の青々しい香りもまた個性的で、梅しごとの季節らしさをしっかりと伝えてくれました。梅シロップ酵母は、シュワっとい勢いよく発酵してしまったタイミングで酵母を作るのがきっと良いのだと思います。
とはいえ、最終的には、どの酵母でもおいしいパンに焼き上がるので、その過程の違いを楽しむ時間もまた、パンづくりの醍醐味だと感じています。
これからも、こんな楽しい実験を続けていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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関連リンク
記事冒頭でもお伝えしましたが、今回のテーマに関連する過去の酵母づくりの記録も、参考にご覧いただけます。(旧ブログへ飛びます)
● 青梅酵母と熟梅酵母でカンパーニュ焼き比べ
● 梅シロップ酵母・青梅酵母・熟梅酵母で食パン焼きくらべ
● 梅シロップが勢いよく発酵した年の、パン作りまでの工程